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針が見えないデバイスで
恐怖心を持たせずGH導入が可能に

はなまるこどもの成長クリニック 
治部智美 看護師

2023年5月に開業したはなまるこどもの成長クリニック(藤本陽子院長、横浜市)は、低身長などの小児内分泌疾患を中心に診療を行うクリニックです。同クリニックは成長に関する悩みを抱える患者さんとご家族がゆっくり相談しながら治療を受けられることをコンセプトに開業されました。看護師を務める治部智美さんは、“長い間、楽しく通える”ことを目標に、様々な工夫を凝らしながら患者さん・ご家族をサポートしています。同クリニックでの患者さんやご家族へのアプローチの仕方、成長ホルモン(GH)治療継続のための工夫についてお話をお伺いしました。

はなまるこどもの成長クリニック 治部智美 看護師

子どもや家族がゆっくり相談できる
環境づくりに注力

はなまるこどもの成長クリニックは、院長の藤本陽子先生が2023年5月に開業したクリニックです。藤本先生は大学病院勤務医時代から、低身長などの小児内分泌疾患を専門に診療し、その後、成長障害の子どもを多く診療するクリニックでも勤務していました。藤本先生の以前の職場で、患者さんやご家族を支える役割を果たしてきたのが看護師の治部智美さんです。

「はなまるこどもの成長クリニックは、藤本先生が患者さん・ご家族が時間を気にせずにゆっくり相談できる環境を作りたいというコンセプトで作ったクリニックです。大学病院では診療時間が限られていますが、このクリニックは学校が終わった後でも受診可能な時間まで診療をしており、患者さんが通いやすいように様々な工夫を凝らしています」と治部さんは語ります。例えば、内装も“カフェ風”にすることで、医療機関に通うという心理的なハードルを下げ、気軽に通い、相談してもらいやすい環境を整えています。

現在、はなまるこどもの成長クリニックに来院する患者さんの悩みは大きく3つあり、身長の伸びが遅いこと、他の子に比べて小さいこと、思春期が早い/遅いことです。また、患者さんのうち半数は他院からの紹介で、残りの半数はホームページなどを見て来院されます。「紹介なしで来院する方は、今まで成長について悩んでいたものの受療行動に結びついていなかったが、近くに“成長”を掲げるクリニックができたのを契機に足を運んだ、という人が多いようです」(治部さん)

「成長障害の子どもは、風邪などで一般の小児科を受診する子どもと違い、一見“健康”です。そのため、なぜ自分が通院しなければならないのかわからなかったり、通院が億劫になったりすることがあります。さらに、小さいときから成長するまで長期間のお付き合いになる疾患の特性から、子どもが自ら通いたくなるように関わっていく必要があります。そのために重要なのが信頼関係作りと楽しく通院するための工夫で、これらはGH治療におけるアドヒアランスに直結します。そのため、当院では、これらに重点を置いた看護を行っています。看護師としては、長期間患者さんの成長を見守れる、やりがいのある仕事でもあります」と治部さんは説明します。

いかに恐怖心を持たせないかが
GH導入時のカギ

GH導入の際、最も重要なのが、まずご家族に注射に対する恐怖心を払拭してもらうことです。実際に治療をするのは子どもですが、ご家族が注射に対する恐怖心を持っているとそれが子どもに伝わり、導入のハードルになるからです」と治部さんは指摘します。

このため、はなまるこどもの成長クリニックでは、GH導入の際、医師が治療の目的や意義などの説明をした後、看護師がまずはご家族だけに対し、30〜40分かけて治療の実際や具体的なデバイスの使用方法、留意点などについて説明するといいます。「このときに子どもを同伴してもらわないのは、最初に十分な時間をとって説明することで、ご家族の治療に対する印象や理解度を把握したいという意図があります。初回の説明には時間がかかるので、その間に子どもは飽きてしまうのを避けたいのも理由の一つです。子どもがクリニックで飽きてしまうと、その後の通院に対するネガティブな印象につながる可能性もあります」と治部さんは説明します。

実際のご家族への相談内容は、お子さんが痛みに強いのか、どの程度注射に興味を持っているか、治療をどのように進めていくか、具体的なデバイスの使い方、などです。「例えば、特に5歳ぐらいまでの小さいお子さんは予防接種を受ける機会が多く、注射に負の感情を持っていることが少なくないので、できるだけ“注射”という言葉を使わないことを説明します。そのため、まずは “ぺったん”や“元気の注入”、“スタンプ”など、注射に変わる共通の言葉をご家族と決めます。デバイスの使い方などを十分に説明することはもちろんですが、言葉の使い方もきめ細やかに話し合うことで、徐々に“子どもに針を刺す行為”に対するご家族の抵抗感や不安感も薄れていきます。ご家族の心の持ち様をポジティブにすることも、治療環境整備の一つなのです。
注射の際に針が見えないグロウジェクター®Lは、子どもやご家族が恐怖心を持ちにくいというメリットがあると考えています。また、2回目の受診時には子どもを交えて説明しますが、初回の説明を十分理解したご家族が格好よくデバイスを使っている姿を見ると、子どもが自ら使いたがることも少なくありません」と治部さんは説明します。

このように説明を尽くしてご家族の治療に対する考え方を聞き取り、子どもに対する接し方や方針などを把握することは、信頼関係の構築に寄与するだけでなく、その後の指導の進め方のヒントを得るにも役立つといいます。

いかに恐怖心を持たせないかがGH導入時のカギ

「頑張っている」ことの強調が、
GH治療のインセンティブに

GH治療では、いかにアドヒアランスを保ち治療するかが重要になります。特に小さな子どもにGH治療の意義を理解してもらうのは難しいのが現状です。注射に伴う痛みや、毎日継続することの面倒さ、定期的な受診や採血があることから、治療に抵抗感を持つ子どももいます。その中で、思うように治療効果を感じられない場合は、本人もご家族も治療に対するモチベーションが下がることにつながってしまいます。

そのため治部さんは“GH治療をすれば身長が伸びると強調しすぎない”ことを心がけているといいます。「治療を行えば大きくなれると強調しすぎると、身長が伸びなかった時のアドヒアランスの低下につながるからです」と語ります。

「実際、GH治療を続けても、なかなか目に見える成果が出ないケースもあります。そうしたケースでは子どもに対しては、『ご飯がたくさん食べられるようになってすごいね』『体重が増えてパワーがついたね』など、身長以外の何らかの成果にも目が向くような説明をします。“毎日治療を頑張っていることがすごい”と強調するのです。こうした工夫は子どもがGH治療を続けるインセンティブになると考えています。
また、実は子ども以上に治療の成果を気にしているご家族に対しても、同じようにフォローアップすることも重要です。どうして通院(治療)しているのかがわからなくならないように、ポジティブに捉えてもらうことが大切です」と治部さんは説明します。

このように“頑張っていること”を客観的に説明するツールとして、グロウジェクター®Lの“注射履歴確認”や、“イラスト機能”が役立っています。「注射履歴確認画面では、注射を行った日に注射マークが出るので、それを見ながら頑張ったねと言えます。また、グロウジェクター®Lには、注射が終わるごとに、魚や、宝石などをコレクションできる“イラスト機能”があり、『魚は何種類くらい集まった?』などの質問を子どもとの会話の糸口にできます。このように子どもたちが興味を持っていることをきっかけにすると、よりコミュニケーションが取りやすく、その子が今楽しいと思っていることや日常生活での変化などについても聞きやすくなります。子どもとの会話がしやすいように、自分でもグロウジェクター®Lのデモ機を使い、魚を集めました。子どもと同じ目線で会話ができると、部活に力を入れている、こんなゲームに熱中している、学校ではこんなことが流行っているなど、その子を取り巻く状況も含めて話してもらいやすくなるのです。聞き取った中で必要な内容はカルテに記載し、医師も診療に役立てています。

こうした会話を重ね信頼関係が構築できると、もしも身長がある程度のところで止まったとしても、それ自体が悪いことではなく、学校や趣味を頑張っていることの方が大切なことだと伝えられ、それを素直に受け止めてもらいやすいというメリットもあります。会話(カウンセリング)自体が、子どもにとって通院を楽しくする一助になっているのではないかと考えています」(治部さん)

針が見えない、薬剤の管理が楽な
グロウジェクター®Lで患者の負担軽減

今ではグロウジェクター®Lに多くの治療上の利点があると考えている治部さんですが、最初は機械に対して苦手意識があったために、間違えてボタンを押した時にどうなるのか、などの心配が先立っていたそうです。しかし、「実際に試してみると、それが杞憂だとわかりました。使いやすいばかりでなく、むしろデジタルネイティブ世代の子どもたちはゲーム機やおもちゃのように興味を持ち、すぐに操作を覚えてくれます」と治部さんは話します。

針が見えない、薬剤の管理が楽なグロウジェクター®Lで患者の負担軽減

また、治療上のメリットも多いといいます。利点の一つが、前述した薬剤注入の際に針が見えないことです。針を刺すという行為は、子ども自身はもちろんのこと、医療行為を行ったことがないご家族にとっても心理的な負担が大きいものです。しかし、「グロウジェクター®Lの場合、ボタンを押すだけで注射できるため、特に導入時に役立ちます。先端ユニットが針を刺す部分の周りを囲んで支えるため、ぐらつくことなく狙った場所に安定して注入しやすい点も評価できます」(治部さん)

グロウジェクター®Lには、薬剤注入中にメロディを流す機能もあります。「本来これは、音楽の終了が注入の終わったことを示す合図になるものですが、子どもに『きらきら星が聞こえるかな?』とメロディに意識を集中させることで痛みを紛らわす効果もありました。また『この音楽が終わるまで』と子どもが頑張る目安にもなります」と治部さんはグロウジェクター®Lの機能の使い方の工夫についても説明します。

治部さんが評価するもう一つのポイントが、薬剤の管理のしやすさです。「薬の残量などの複雑な計算をしなくても、今使っている薬で注射できる残り回数を画面で確認できます。使用する患者さんやご家族も楽ですし、説明する医療者側の負担軽減になるのも大きいですね」と治部さんは説明します。先にも説明した魚などの“注射後のイラスト設定機能”も、楽しく治療を継続してアドヒアランスを向上させる助けになるとともに、医療者と患者さんのコミュニケーションツールとしても役立ちます。

さらに、服薬管理アプリであるめろん日記®も、ご家族が患者さんを支えるための有効なツールになっています。めろん日記®はグロウジェクター®Lの注射の記録データ(投与日、時間、投与量など)をスマホに転送し、患者さん本人やご家族がそれらを確認できるアプリとなっており、注射記録だけでなく、注射した場所や注射時に気になったことなどもメモできます。 また、身長 や体重を入力すれば身長SDが自動計算され、成長曲線も作図されて確認できます。アプリの中でアバターを設定すると、患者さんの成長に合わせてアバターも成長します。注射の継続でポイントがたまり、それを使ってアバターのスタイルを変えることができる“お楽しみ機能”もあるので、治療継続のインセンティブにもなります。

治部さんは「患者さんの中には、このポイント収集を楽しみにしているお子さんもいて、アドヒアランスの向上に役立っていると感じています。また、登録したご家族や医療従事者がメッセージを送れる“なかま機能”を使って、ご家族とメッセージのやりとりをし、コミュニケーションが密になった親子もいます」と話します。

またこうしたデバイスの場合、導入時の説明が医療者側の負担になることもあるが、「GH治療が決まった時には、まず製品説明動画の二次元バーコードを案内し、予習してもらっています。その上で、初回説明の際に不明点を解消することから始めると、実際にデバイスを触ることに集中できて理解を深めてもらえるので、あまり負担に感じることはありません」と治部さんは説明します。

「低身長を含めた小児内分泌疾患は、医療機関との長いお付き合いが必要です。患者さんからの評価の高いツールを上手に使いながら、できるだけ苦痛が少なく、楽しくポジティブに治療が進められるようにサポートすることが看護師の役目だと思っています。これからも患者さんやご家族に寄り添い、困ったことがあれば一緒に乗り越えていきたいですね」(治部さん)

治部智美 看護師

治部智美 看護師

(じべ ともみ)

はなまるこどもの成長クリニック
聖マリアンナ医科大学や神奈川の小児科クリニックで看護師として勤務し、多くの小児内分泌疾患患者の看護を行う。2023年5月より現職。
(はなまるこどもの成長クリニック ホームページ https://hanamaru.clinic/)

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